デイサービスセンターたんぽぽ苑看護職員 原田
送迎車に乗車するようになって、時々新鮮な発見があります。
ある時は、同じ神岡町でありながら今までその存在を知らなかった地区を訪れた時の驚きであったり、またある時は無神経な路上駐車のあまりの多さと迷惑さに憤りを感じたり…。今回はその中でも超感動のシーンをご紹介します。
それは、梅雨のつかの間の晴れ間が広がったある日のことです。
いつものように、ある利用者さんを自宅へお送りするため、街の郊外の畑が広がる道を送迎車は走っていました。車の中には利用者さんと、運転手さんと、私の3人。もうすぐ目的地に到着というとき、車がゆるやかに停車しました。
なんだろう?と外を見ると、車のちょうど真ん前を山鳥のお母さんと、その後ろから小さな雛が1羽チョコチョコと、道路を横断中でした。
親子が無事に道路を渡りきり、3人でホッと胸をなでおろしたその時、今度はその雛が立ち往生してしまいました。よく見ると、お母さんが向かった草むらと道路の間には30cmほどの側溝があり、お母さん鳥はピョンと難なく飛び越えたのですが、まだ小さな雛にはそれを飛び越えることができません。
ハラハラしながら見ていると、お母さん鳥がまた戻ってきて、なんと!私たちの車の前に立ちはだかりました。立ち往生している雛を身を呈して守っているかのようです。そして、雛のほうへ行くと、雛を促すようにまたピョンと、側溝を飛び越えて見せました。でも、雛はオロオロするだけでやっぱり飛び越えることができません。お母さん鳥は何度も戻ってきては同じように私たちを威嚇し、雛の前で側溝を飛び越えて見せました。
しばらく息を飲んでその様子を観察していた3人でしたが、いつの間にか車の中から、親子に「がんばれ、がんばれ!」と声援を送っていました。
すると、幸運なことに、側溝に一部蓋があることに気がついたお母さん鳥は、雛をようやく草むらのほうへ誘導することができました。その瞬間、車中では、「よかったねー。」「すごいなー。」と、歓声と拍手がわき上がりました。
「人間より偉いね。」「見習わなくちゃ。」と盛り上がりながら、無事利用者さんをお送りしました。
ほんの数分のできごとでしたが、一組の山鳥の親子に感動をもらい、みんなで心がほんわかしたひと時でした。
職員からのメッセージとして、リレー形式で職員のエッセイを綴っています。
次回は、特別養護老人ホームたんぽぽ苑運転手 和仁 の予定です。