トマトの茎の青い香り、蝉の声、木陰の砂の感触
夏のかけらたちに出会うと、子供の頃に戻る瞬間があります。
「いけちゃんとぼく」西原理恵子著 角川書店
という絵本をご存知でしょうか。
少年とずっと前からそばにいる「いけちゃん」の、当たり前でありながら光り輝いている、日常のエピソードを集めたものです。
少年はたくましくなり、いつしかいけちゃんが見えなくなります。
いけちゃんがいてくれたら、私が子供の頃に感じた淋しさや不安は、些細なことに感じられたかもしれません。
「ひとりごはんのおいしい食べ方」なんて誰も教えてくれないでしょう。
ある日、少年は家の中で探し物をしています。
「なにをさがしているの?」
「おばあちゃんがかくしたんだ。もしかしたら、捨てられちゃったかもしれない。」
「まださがすの?そとにでてみない?」
「ねえ、ずっとおぼえていてくれる?わすれない?」
「じゃあ、いつになるかわからないけど、あなたがおじいさんになったころになるかもしれないけど、かならずかえってくる。」
「わすれないでね。」
「すきだとかならずかえってこられるの。」
夏の終わりに、ふと考えます。子供の頃の私は、何を探していただろうと。
職員からのメッセージとして、リレー形式で職員のエッセイを綴っています。
次回は、ホームヘルプサービスたんぽぽ苑 ホームヘルパー坂田 の予定です。