特別養護老人ホームたんぽぽ苑 チーフ 沖中

うちの母は演歌界のアイドル、氷川きよしがものすごく好きである。

三度の飯より、実の娘より氷川きよし!と言ってもいいほどあちこちコンサートに出かけたり、テレビ番組を録画して保存版にしたり、雑誌を買いあさり切り抜いてファイルに閉じて大切に保管してあるし、極めつけはファンクラブに入っている・・・

氷川きよしを呼び捨てにすると「きよしちゃんと言いなさい!」と怒るので、何故か全く興味のない私も「きよしちゃん」と呼んでいる・・・

家の居間と2階にある母の寝室にはぼう大なきよしちゃんのコンサートビデオとCD、コンサートに行くたびに手に入れてくるグッズがズラリ並んでおり、ポスターも至るところに貼ってある。

朝起きて、居間に行くと必ずきよしちゃんのCDが大音量でかかっていて、私としては目覚めが悪いので電源を切ると、「なにするの~」と半泣きで怒られる。

そんな日々が毎日続いている・・・

きよしちゃんが出るテレビを録画するのは何故か私の仕事だが、テレビに出たのを見逃してしまうと「ビデオを撮っておかない、あんたが悪い」と言われ、きよしちゃんが載っている雑誌を買い忘れると「どうして買って着てくれないの・・・意地悪・・・」とこれまた半泣きで怒る。そこまで言われると「私か?私が悪いのか??」と悩んでしまう・・・

初めは氷川きよしに夢中になれば、私のことを干渉しなくなるからラッキー☆なんて思っていたが、これが予想以上に干渉しないので、それってどうなの?と思うこともしばしば・・・

でも以前は口癖のように肩が痛い、目がまわるなどと体の不調を訴えていた母がきよしちゃんに会いに飛び回るようになってからあまり不調を言わないのが不思議!!(恐るべし!きよしちゃんパワー!!)

一方、父はきよしちゃんに嫉妬している。でも文句を言いながらも一緒にコンサートに行ったり、送り迎えとかをしてけなげだと思う・・・

よく母は、「きよしちゃんはいい子だなぁ、かわいいなぁ」と言うので、「興味のない私がここまでしてるんだから、実の娘のほうがいい子でしょ?!」と言い返すが、「実の娘なんやで当たり前」と一枚も二枚のうわてでつっこんでくる・・・

まあそんな母だが、きよ友というきよしちゃん仲間もでき、インドア派だったのに今じゃきよしちゃんのため!とどこでも行くし、前よりはハリのある毎日を過ごしているから全てよしとしよう!!(なんて物分りのいい娘(涙))

でもただ一つ、母にお願いがある・・・

頼むから、テレビに出てるきよしちゃんに向かって、ものすごい笑顔で「きよしちゃ~ん」と言いながら両手で手を振るのはやめてほしい・・・

きよしちゃんもこんなファンがいて幸せだろうなぁ・・・



職員からのメッセージとして、リレー形式で職員のエッセイを綴っています。次回は、デイサービスセンターたんぽぽ苑 介護職員 高田 の予定です。